歯学センターの窓から

「アメリカ留学の思い出」歯学センターの窓から no.113

アメリカ留学の思い出
 5月の連休に私は、アメリカで最初に留学した、フンボルトステート大学を35年ぶりに訪ねて来ました。サンフランシスコから車で北へ5時間。そこは大木の生い茂る森の淵にある、美しい大学です。学生の時、まだ英語の殆ど分からない私は、アメリカ人だけの寮に入って学生生活をスタート。たった一人の日本人は目立つ存在でした。最初は差別にあったりしたものの、深く考えずに全てはね返し、最後は寮の皆と良き友達になれました。
 そんなある日、酷い風邪をひきました。一週間経っても風邪は治らず、仕方なく校内の保健室へ。日本での機械的な診察を想像していた私に、保健室の年配のドクターは「君の風邪はこの病原菌が原因で起きていると思うんだ。直ぐに検査して薬を出すから、きっと良くなるよ。」と、私の肩に手を置き英語の医学事典を見せながら、説明してくれました。その優しい言葉と診察が、弱った私の心に焼き付きました。この経験から歯科医師になった今でも、病気で困った方にはまず安心して貰いたいという思いで接しています。人の心は良い出会いと経験が育てる。また自分もそんなドクターになれたらと思いながら、日々診療を続けています。35年ぶりのアメリカ、行けてよかったと思います。

田北行宏